知り合いにお金を貸すときに利息を取ると違法になる?


知り合いにお金を貸すときに利息を取ると違法になる?
マイホームを建てるなどの理由で、親子や兄弟でお金の貸し借りをすることがあります。消費者金融や銀行でお金を借りるなら利息がかかるのが当然ですが、個人対個人の場合はどうでしょう。

知り合いにお金を貸す時の利息のきまりを知って、健全なやり取りをしてください。


 

利息制限法の範囲で利息をとれば問題ない

利息制限法とは、お金を貸す時の金利上限を定めている法律です。一般的な貸金業者だけでなく、個人のお金のやり取りにも適用されます。元本に応じてとれる金利水準は、下記のように決まっています。

元本10万円を超えない範囲:年20%まで
元本10万円~100万円未満:年18%まで
元本100万円以上:年15%まで

知人に100万円を貸したとしたら、とれる利息の上限は一年あたり15%。これ以上の利息をとると違法です。上限値を超えた利息を設定しても刑事罰に問われることはありませんが、法律上は無効とされます。

双方合意の上で「返しきるまで毎月1万円払う」などと決めても、守ってもらえる保証はないということ。後に残る形で借用書をとっていたとしても、法的な拘束力がありません。

もめ事を避けたいなら、上限金利を守った範囲の金利を決めておくこと。親戚同士で気まずい関係にならないためにも、約束事はきっちり守る心掛けが重要です。


 

家族以外に無利息でお金を貸すと課税リスクがある

個人対個人でも、得た利息分について所得税がかかります。申告するのが面倒だからと、無利息でお金を貸したらどうでしょう。利息が入ってこないので、当然ながら納税義務はありません。

その代わり「適正利息で貸していたら入っていたはずのお金」が贈与とみなされるリスクがあります。親切心でお金を貸したとしても、税務上の取り扱いは同じです。

金額が大きくなればなるほど、期待される利息も高額になって当然。何年かして指摘されたとしたら、思わぬ出費になりかねません。

何となく腑に落ちないようですが、この決まりがないと脱税手法になってしまいます。「あげたわけではなく貸しただけ」と言われてしまえば、課税手段がなくなります。

相続が発生する前に子どもにお金を渡す方法の一つとして、利用されてしまうこともあるでしょう。まじめに税金を払っている人が損するようでは、公平性がなくなります。納税義務をきちんと果たしてもらうために作った決まりの一つと考えられます。

なお「数万円だけ貸した」「3日間だけいくらか貸した」など、小額・短期の場合には非課税とされるケースがほとんどなので、過剰に心配する必要はありません。夫婦や親子などとごく親しい間柄の場合は、配慮がなされる場合もあります。いずれにしても、大きなお金の貸し借りをするときは慎重になるべき。対身内でも対友人でも、税制面まで考慮した判断をする必要があります。


 

トラブル防止のためには借用書を残すこと

適正利息と返済条件が決まったら、トラブル防止のために借用書を書いてもらいましょう。借用書は、借りた人が主体になって作るもの。

金利・返済方法などを書かせることで、確かにお金を借りているという自覚がでます。話しの行き違いもなくなるので、お互いに嫌な思いをしなくてすみます。

身内とお金の話しをするのは、非常にストレスがかかるもの。嫌なことは一度できっちり肩をつける気持ちで、話し合いをしてください。
参考までに、借用書の書き方の一例を紹介しておきます。

表題:一番上に「借用書」と書きます。
宛名:貸し主の名前を書いてください。「あなたに対する書面です」という意味合いがあります。

金額:「私は貴殿より●年●月●年日に●円を確かにお借りしました」と書きます。いつ・誰から・誰に・いくら借りたかを明確にする目的があります。金額表記は「100万円」などのアラビア文字でなく「壱百萬円」などのような漢数字を使うのが通例です。「一」「二」などの書き方は、改変されてしまうリスクがあるので避けましょう。

支払い方法と返済期限:「●年●月●日までに、一括でお振込にて支払います」「元金に利息を付した金額を●年●月●日より毎月15日に元金均等払いにて支払います」などと記載します。分割なのか一括なのか・振込なのか現金手渡しになるのかを明確にしてください。

利息:決めた利息を記載します。遅延損害金を設定する場合は、合わせて書いておきましょう。

その他の条件と約束事:支払いが遅れたらただちに残金を一括返済するなど、特別な約束事をしたときに記載します。民事再生手続き・破産申立をしたときの取り扱いも決めておくと安心です。

日付:借用書を書いた日ではなく、お金を実際に借り受けた日付を書きます。
借主の署名:借り主の住所と氏名を記載し、捺印しましょう。

借用書は「消費貸借に関する契約書」にあたるので、収入印紙を貼る必要があります。貼っていなかったからと言って法的効力がなくなることはありませんが、印紙税とその2倍相当の金額の過怠税が課されます。身内同士のやり取りにしろ、税法上のルールは守るようにしてください。

なお、借用書には、財産を差し押さえする効力はありません。念には念をいれてというようなら公正証書を作成しましょう。

数千円の手数料と手間がかかるのがネックですが、裁判無しで差し押さえまでできるようになります。公証人が保管することで偽造の心配もなく、安心です。

身内同士の貸し借りでここまでするのはやり過ぎと感じる方もいるはずですが、お金のトラブルで関係が気まずくなるよりずっと良いはず。

大人同士のお話なら、筋を通すのが当然です。「お金を貸すなら返ってこない覚悟で」と言われることがありますが、善意のつもりで渡したものが焦げ付くと、後悔だけが残ります。

相手の将来を考えても、良い影響は与えません。お金の貸し借りをしないに超したことはないものの、どうしても避けられない状況なら、多少ビジネスライクな対応が必要。相手の自律を促すためにも、社会の決まりに則った正しいルールで行いましょう。

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